50代半ばの家移りと勉強の日記

めし、フロ、家づくり、慶應通信、ついでのアレコレ

舌の先が口蓋を三歩下がって、三歩めにそっと歯を叩く。

■1.7(Fri.) 快晴 

大雪一過。という言葉があるかどうかは別として、きっぱりとした晴れ空だ。子どもたちには「今日早く登校したら、きっと校庭は雪だらけだぞ」と耳元でささやいたら、ふたりともムクッと起き上がってくれた。でも起床した時間から猛ダッシュで支度して登校したとしても、おそらく処女雪は誰かに蹂躙されているだろう。世界はいつまでもきれいなままの姿を保っていてくれないのだ。

しばらく前にAmazonで注文しておいた、ナボコフの『ナボコフ・コレクション ロリータ』(新潮社)が届く。

これで全5巻が揃った。

『ロリータ』、若島正訳の新潮文庫版を読んだのはいつだったか。先日、『テヘランでロリータを読む』(河出文庫)をつい買ってしまい、も一度読んでみようかと思った次第。

ロリータ、我が命の光、我が腰の炎。我が罪、我が魂。ロ・リー・タ。舌の先が口蓋を三歩下がって、三歩めにそっと歯を叩く。ロ。リー。タ。
朝、四フィート一〇インチの背丈で靴下を片方だけはくとロー、ただのロー。スラックス姿ならローラ。学校ではドリー。署名欄の点線上だとドロレス。しかし、私の腕の中ではいつもロリータだった。

この冒頭一行だけを読んでも、若島訳をはじめて読んだときに感じたドキドキを思い出す。
「我が命の光」の後に直ちに続く「我が腰の炎」という単語の連なりよりもむしろ、ここは「舌の先が口蓋を三歩下がって、三歩めにそっと歯を叩く。ロ。リー。タ。」の方だろう、わたしのドキドキを増幅させてくれるのは。