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積ん読王の 自由画帖

〈読み、考え、旅をし、見て、話して、書く〉同時代ノート。

見たことがないものを生みだす力とは ~小林せかいさんの『ただめしを食べさせる食堂が今日も黒字の理由』を読んで

読書会ファシリテータの穂崎(@xaqihooo)です。
未来食堂」店主・小林せかいさんの新刊『ただめしを食べさせる食堂が今日も黒字の理由』*1太田出版)を読みました。

ただめしを食べさせる食堂が今日も黒字の理由

ただめしを食べさせる食堂が今日も黒字の理由

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日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2017<食ビジネス革新賞>受賞!

メニューは1日1種だけ。決算、事業書は公開。
ちょっとしたおかずのリクエストができる「あつらえ」。
一度来た人なら誰でも店を手伝える「まかない」。

店主1人、客席12席の小さな定食屋から、未来の"ふつう"が生まれている。
その超・合理的な運営システムと、ちょっとした非常識。
削ぎ落とした果てに見えてきた、業種を超えて注目される"起業"の形。

"誰もやったことのないアイデアを形にするということは、
誰もやっていないゆえに普通とは違うわけで、
イコールそれは弱点にも成り得ます。
だからきっと、「やらない」理由はいくらでも思いつくでしょう。
でも「やらない」と決めるのはぎりぎりまで待ってみませんか。
あなたのアイデアを形にできるのは、あなたしかいないのです。" (Amazonページより)

前著『未来食堂ができるまで』は、小林さんのブログの再編集版でしたが、今回は120,000字の書き下ろしだそうです。
目次を眺めてみます。

  • はじめに
  • 第1章 未来食堂ってどんな店?
  • 第2章 懐かしくて新しい、未来食堂のシステム
    • 1 まかない--50分の手伝いで1食無料
    • 2 ただめし--壁に貼られた1食券を剥がしてもってくれば無料
    • 3 あつらえ--あなたの好みに合わせておかずをオーダーメイド
    • 4 さしいれ--飲み物の持ち込み自由。ただし半分はお店に差し入れ
    • 5 未来食堂らしさ、とは
  • 第3章 見たことがないものを生みだす力
  • 第4章 未来食堂のあれこれ

未来食堂ってなに、と言う方は、いろいろと記事があるので検索してみてください。
tabi-labo.com
career-tasu.com

読む順番は前著からでなくとも大丈夫ですが、この『ただめしを』は未来食堂のシステム自体の本質的なことを語っていることもあり、その前提が書かれている前著を知っておいた方がより理解が深まる・・・というより共感を得やすいと思いますね。

ぼくが大きく考えさせられたのは第3章です。
「見たこともないものを生みだす力」、この章こそが「未来食堂」なるシステムの本質であろうと思います。前章が非常に具体的であるのにたいして、この章はメタ思考の一章ですね。わすが25ページていどの分量ですが、そこに書かれていることはぼくにとっては、牛刀のような重さと切れ味がありました。

「アイデアが現実になるまでの流れ」として、彼女は次のような流れで論を進めていきます。

  • A 息苦しさを見つめ続ける or B 情景をものすごく細かく想像する

  • "1枚の絵"がひらめく

  • 現実に落とし込む(定石編)

  • 現実に落としこむ(独自編)

どこかで聞いたことがあると思いますか?
でも、ここで言われているのは、「見たこともないもの」を生みだす力についてです。しつこいですが、書かれていることは牛刀の抜き身のような重さと切れ味を持った考え(思想)を創出するフレームワークです。

未来食堂には、ビジネスプランの相談に来られる方がいるそうですが、その98%くらいはどこかで聞いたことがある案ばかりだそうで、例えば「お年寄りから子どもまで集まれるような地域カフェをつくりたい」というもの。
そのアイデアが良い悪いというのではなく、「ワクワクして記憶に残るほどの面白いプランなのか」という点で、小林さんは興味もないし意見もでてこないといいます。

世の中には”良い”と言われる考え方や振る舞いがあります。「老人が集まれるのは良い」「子供が集まれるのは良い」「地域活性化は良い」「みんなが集まれるコミュニティは良い」。いわゆる時代の空気といったものでしょうか。そういう、世間の風潮や空気で認められている”良いもの”を組み合わせて発想するのは、たとえると、”良いもの”だけを集めた盆栽の鉢の中でアイデアを練っている状態に思えるのです。
(中略)
本当に世の中にとって見たことのないもの、ワクワクするものを考えたいのであれば、既存の”良い”に振り回されてはいけません。
(中略)
100人中100人が「そういうのいい感じだよね」と共感できる既視感のあるアイデアを、なぜ、”あなたが”実行しなければならないのでしょうか。誰からも褒められるアイデアは危険です。なぜならそのアイデアは、誰もが想像できるレベルの範疇にしか留まっていないということだからです。

なぜ、”あなたが”実行しなければならないのか----。
牛刀の切れ味は生半可なものでは、ありませんでした。

*1:このタイトルが決まるのに12時間かかったそうです。