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積ん読王の 自由画帖

〈読み、考え、旅をし、見て、話して、書く〉同時代ノート。

回想の江戸川乱歩 (1) ~面白い小説を見つけるために #3

26 面白い小説を見つけるために 33 小説・創作 30 自在眼鏡の本棚

前回まで。
thx.hateblo.jp


先日、読書会が終わった後の懇親会でのこと。参加者の方たちと、小学生のときには何を読んでいたかという話に、たまたまなった。
参加者は、みなさん30代、ぼくより10歳は若い。
口から出てきたのは、やはりというか、ドイルと乱歩だった。ルパンの名前にはあいにく聞くことはなかった。参加者のおひとりは、乱歩についてブログでこう書いている。

cinnamon-shokai.com

2016年元日、江戸川乱歩作品の著作権が切れた。これによりいろんな作品が従来よりも自由に読めることになるが、その効果かどうか、2016年5月から1年にわたって集英社から江戸川乱歩明智小五郎事件簿」シリーズが連続刊行されている。
集英社文庫 江戸川乱歩『明智小五郎 事件簿』全12巻 刊行開始 Book covers featuring my artwork | KonomiKita.com


明智小五郎がはじめて登場した「D坂の殺人事件」から、事件発生順に並べた全12巻シリーズ企画。せっかくなので、最初から読んでみることにしよう。ぼく自身は乱歩をほとんど読んでいないのだ。



一口に明智小五郎と言っても、「D坂の殺人事件」の発表は1924(大正4)年である。じつに92年前だ。
唐突だが、先の大戦に時計を戻すと、戦時中は〈探偵小説〉は店頭に並ばなかった。紙の不足もあったが抑圧されていた。抑圧というのは、検閲がやかましく、重版もかかりにくくなったという意味である。それが昭和14年からというから、作家にとっては窮屈だったに違いない。
その反動か、敗戦ののちに早々と復刊を遂げていく。

書店の棚に、ホームズ物やルパン物がならんだのは、昭和二十一年早春からだったと思う。「バスカービルの犬」が「妖犬」という署名になっていたから、昭和四年から出た平凡社版「世界探偵小説全集」の紙型を流用したものであろう。
ルパン物は、保篠龍緒訳で、第一回配本が「怪紳士」だった。「妖犬」も、ルパン・シリーズも、文庫サイズであり、つづいて、海野十三江戸川乱歩の文庫本やB6判が書店に溢れた。(江戸川乱歩著作目録をみると、昭和二十一年度だけで、旧作が約二十点、出版されている。〈後略〉)

小林信彦『小説世界のロビンソン』からの引用だ。小林信彦は小説家、コラムニストである。
彼は若かりしころ、当時江戸川乱歩が社主だった、推理小説雑誌「宝石」に「雑誌の改善案」のアイデアを投稿した。それが縁で、1959年夏創刊予定だったミステリ雑誌「ヒッチコックマガジン」の編集長に乱歩の後押しで抜擢されることになり、そこから乱歩との関わりが出てくる。


昭和二十一年、小林信彦は中学一年。早熟な本読みだった。

いかに中一とはいえ、幼稚な読者で、同じ年の早春に、「月刊読物」三月号で太宰治--この名前が、まず、読めなかった--の「やんぬる哉」を読み、つまらないユーモア作家がいるものだ、と腹を立てた。
推理小説〉という新語が登場するのは、このころである。〈探偵小説〉が〈推理小説〉にかわったのを、漢字制限のせいにする説を見たことがあるが、そうではないと思う。

小林自身は、乱歩についての印象的なエッセイをいくつも書いている。乱歩の作品で探偵小説好きになったわけではなく、横溝正史『本陣殺人事件』がきっかけらしいが、それはまた別の話で、ここまで来て、ぼくは小林の『回想の江戸川乱歩』(光文社文庫)を再読してみることにする。
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