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積ん読王の 自由画帖

〈読み、考え、旅をし、見て、話して、書く〉同時代ノート。

【サンヤツデイリー #6】人生ボーダーレス ~ヤマザキマリ『国境のない生き方』

30 自在眼鏡の本棚 34 エッセイ・コラム・散文

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ヤマザキマリ『国境のない生き方』(小学館新書)。

サブタイトルは「私をつくった本と旅」。あの人気漫画「テルマエ・ロマエ」の作者による、体験的人生論とある。
その言葉通り、この人の人生は「旅」だ。
旅と言うよりは、定住しないというべきかしら。
14歳で、母親のかわりにヨーロッパへ一人で旅だったことから、彼女は変わっていきます。内面も、そして容姿も。

それまで北海道のお嬢様学校で囲われて生きていた女の子は、母親の名代でヨーロッパに一人ででかけます。憧れのヨーロッパでしたが、現実はそんな期待と憧れを吹き飛ばして、14歳の女の子にのしかかってきます。
予約していたホテルはオーバーブッキングで宿泊できず、厳寒のパリに追い出されます。
言葉もろくにしゃべれない、知り合いもいない。
誰も頼ることは出来ない。

そんな状況で、彼女は悟ります。
畢竟、自分しか頼れない。

私は、私を頼る-----
「頼むよ、自分」「頼むよ、もう、お前しかいないんだ」

14歳たったひとりで旅立つ娘も娘なら、旅立たせる親も親、といいたいところですが、音楽家だった母親の

この旅が私にとって特別なものになることに賭けた

判断だったのですね。
母親は勁し。

はたして、娘はヨーロッパでひとりの老人と出会います。彼は陶芸家でありますが、事情を知って、年端もいかぬ娘を一人でヨーロッパに行かせた親に憤慨します。
あわてて彼女が、いや私自身が絵画を見たくて望んだことなんだと、母親をかぼおうとすると、
「だったら、なんでイタリアに行かんのだ!」
とイタリアの美術の素晴らしさをこんこんと説くと、
最後に、
「絵の勉強がしたいのなら、イタリアに行け。そしてわたしの家に来なさい。そう母親に言うんだ!」
と言ったんです。

結局、彼女は17歳でイタリアに留学します。
もちろん、その経験が彼女の人生をまた大きく変えていくんですが。

波瀾万丈?
そんな知ったかぶりの言葉を、ぼくは彼女の半生に使いたくありません。