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積ん読王の 自由画帖

〈読み、考え、旅をし、見て、話して、書く〉同時代ノート。

【カラマーゾフの習慣 #5】スメルジャコフ登場

24 日記(カラマーゾフの習慣) 30 自在眼鏡の本棚 33 小説・創作

前回まで。
thx.hateblo.jp

それにしても、修道院でのアリョーシャとラキーチン(アリョーシャの学友とでも言おうか)の会話は、はずんでいました。
というより、このくだり、明らかにドストエフスキー自体が愉しんでいるみたいな感じです。

ここまで、展開としてはカラマーゾフ一家が修道院に集い、ゾシマ長老の前で醜い諍いをして、連中はそれぞれがそれぞれに怒りまくり喧嘩別れをしつつも、院長と食事(ランチ)をしに行く・・・という時間軸は不進捗ですが、人物の掘り下げなどの小説的深耕は進捗している、という面白い状況にあります。

しかし、ここでぼくは「修道院の昼食」というのを見逃しませんでした。
5種類のメニューが並んでいます。この情報もラキーチンが入手したものです。

という美味しそうなメニューです。ま、素材は魚ばかりですが、なんとも贅沢そうな気配。修道院ってところは意外に金持ちなんじゃないでしょうか。

閑話休題
第3編は、「女好きな男ども」というタイトルです。
冒頭から、カラマーゾフ一家の下男スメルジャコフ誕生の話がはじまります。
彼の母親リザヴェーダ・スメルジャシーチャヤは「神がか」っていて、要するに「白痴」という設定。「白痴」ゆえに清らかなる心を持ち合わせていたので、みんなからは嫌われていませんでした。
外道親父フョードルとは対極にあります。

しかし、その無邪気さゆえに、彼女はフョードル・カラマーゾフ(悪親父)に付け入る隙を与え、とうとう彼とできてしまったようなのです。
彼女は妊娠しました。父親はフョードル。
世間はそう噂しましたし、フョードル自身もきっぱりと否定はしなかった。躍起になって火消しに走ったのは、フョードルを支えてきた下男のグリゴーリーでした。なので、グリゴーリーはリザヴェーダを屋敷には近づけないようにしていたのです。

リザヴェーダはまさにわが子を産まんとするとき、まるでそれを、つまりはフョードル父親ということ裏付けるように、カラマーゾフの屋敷の壁をよじ登ると、身重の身体で庭に飛び降りた。
彼女を忌み嫌っていたグリゴーリーですが、これには驚いて、彼女を救わんと医者のもとへ駆けつけたでしたが、けっきょく彼女は死んでしまった。そして、なんとか子どもは一命を取り留めたのです。

その子どもが、スメルジャコフというわけです。グリゴーリーの息子として、彼もまたフョードルに仕えることになったのです。

3編冒頭からここまで20ページ。
スメルジャコフ誕生の経緯を語る作者は、息を潜めるようにして語っています。
なにかが、起こるに違いない。
そんな予兆を孕んだ筆遣いです。