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積ん読王の 自由画帖

〈読み、考え、旅をし、見て、話して、書く〉同時代ノート。

【芥川賞直木賞予想 #154-3】ずんずん候補作を読む

30 自在眼鏡の本棚 37 芥川賞直木賞ウォッチ

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帰省した方が自分の時間があるのだろうと思っていたら、案外自宅でゴロゴロできる時間がとれると知った年末。
2015年も、もうすぐ暮れますね。
お陰様で、候補作の読破もだいたい快調です。

芥川賞候補で言いますと、先日は滝口悠生「死んでいない者」を読みましたが、そのあとに本谷有希子異類婚姻譚(いるいこんいんたん)」、松波太郎「ホモサピエンスの瞬間」、加藤秀行「シェア」を立てつづけに読了しました。

本谷さんのは、

ある日、自分の顔が旦那の顔とそっくりになっていることに気が付いた。

という冒頭から始まる夫婦の奇妙な話。
長年連れ添った夫婦は似てくるというのはよく聞くが、冒頭の一文からだいたい予想はしてしまうものの、単に「似てくる」といういい話では終わらない。状況はどんどんホラーっぽい雰囲気を帯びていき、一筋縄ではいかなくなってくる。
いいぞいいぞと思っていたら、ひっくり返ったのは最後あたり。

追い詰められていく妻がいたたまれずに放ったひと言で現出した状況に、ただ茫然。
いや、悪い方にね。

つづいて、松波さんの作品。会話文と地の文とが交互に配置されてい形式に、戦時中に発症(?)した「肩こり」を抱え戦後もそれが治らない男性の治療(鍼)を通して、先の戦争、日中戦争にまで言及し、国家とはなにかとウィングを広げて描こうとしている、ようなのだが、前述のスタイル(形式)を用いた意図や効果が、ぼくにはまったく理解できなかった。読むのに、ただ、しんどかっただけでした。
読み手に負担を強いる対価として、「感動」がほしかった。

さて、加藤さんの「シェア」。
ベンチャー企業の社長と離婚した女性・ミワは、海外発のウェブサービスAirbnbのような)を使い、高層マンションの部屋を旅行者に貸すというビジネスを展開している。
彼女にはベトナム人女性がビジネスパートナーとしてサポートしている。法律すれすれの仕事に携わる女性たちは、自らの足下のおぼつかなさを認識している。その頼りなさが、オリンピックを控えて浮かれはじめている現代東京の雰囲気を描いていて、ここまでの作品の中ではとても共感しやすかった。

ひと言、卒がない。文章もうまいと思う。
さて、その先は? 
ここが評価の分かれ目かもしれないが、ぼくはこれまでの作品のなかでは上位にくると思っています。