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積ん読王の 自由画帖

〈読み、考え、旅をし、見て、話して、書く〉同時代ノート。

無事、終了! 積ん読王の「ブックブレイク 秋」

10 武蔵小杉読書会 98 ブックブレイク

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昨日、積ん読王の「ブックブレイク 秋」を、無事終えることができました。
参加者のみなさん、プロデューサーのInaさん、朝10:00から夜19:00まで、懇親会を含めてお付き合いいただきまして、大変有り難うございました。

おそらくは秋日の爽やかな好天を感じつつ、渋谷で延々と3冊の本について語っていたという、ある意味希有な体験でした。ぼくも読書会はやりますが、こういう「キャンプ型」ははじめてでした。
当日、ぼくは風邪で喉を痛めつつもゆるく快復傾向でしたが、喋りすぎてまた元に戻ってしまったようです。嗚呼ホトトギス、不如帰。

さて、当日のレポートについては、さっそくInaさんが「第一弾」ということでアップされています。早いなあ。有り難うございます。ameblo.jp

第1部 10:00~11:30 西村佳哲『自分をいかして生きる』(ちくま文庫)

この本は200ページ弱なんですが、冒頭を一読するや「あ、厄介だ」と感じていました。平易な言葉を遣われていますが、どうもすんなりとアタマに入ってこないのです。
と、参加者のかたからも、fbを介して同じようなため息が聞こえてきました。

ここに同志がいた、と感じた瞬間です(笑)。

そんな感想からこの本について議論がはじまりました。ぼく自身、ここに書かれていることはいちいち肯く部分がけっこうあって、つまり著者からボールを投げかけられている気がして、都度都度ページをめくる手が止まったくらいです。

しかし、どうにも著者のいいたいことがすんなりアタマに入ってこない。
さらにいうなら、それらヒントの積み重ねが、ぼくを思考の高みと解決のカタルシスに導いてくれないのです。
これが不満というか、モヤモヤの原因でした。

「生き方」や「仕事」というのは、簡単に結論づけられるものではないことは解りますが、読み手にとって、作者の「思考プロセス」を見せられてそれに付き合えといわれるのも辛いなというのが、ぼく含めて参加者のかたからの率直な意見でしたね。腰が引けた表現も見られましたし(「そこ、言い切ってよ!」みたいな)。

有難いことに、そこを見事にカバーするかのように、Inaさんがそのエッセンスをばっちりと抜き書きしてきてくれました。これでこちらもだいぶスッキリしたのは助かったのですが、同時に本の構成には一考の余地アリだと感じました。
構成ひとつ表現ひとつで、伝えたいこともうまく伝わらない。伝えているようで、伝わっていない。

なので、読書会のような場があれば、読み手同士お互いに理解を深め合うようなことができると思えた次第であります。

自分をいかして生きる (ちくま文庫)

自分をいかして生きる (ちくま文庫)

ここで、ランチです。
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第2部 13:00~14:30 三島邦弘『 計画と無計画のあいだ 「自由が丘のほがらかな出版社」の話』 (河出文庫)

じつは、この本を議論するにあたり、ぼく自身は憂鬱でした。
参加者からいちばん支持されるんではないかと予想し、しかし再読したぼく自身は、どうも初読のときに比べて、この本にたいするテンションが低くなっていたからです。

なんでだろう。
この本はまさに出版不況の真っ只中で、「ひとり出版社」を立ち上げた青年の青春記です。波瀾万丈とまでは激しくはないですが、「友情と努力と勝利」の「ジャンプ」的ストーリィです。
手にとって興奮したぼくは、それを別の読書会のテキストにもしたくらい。

それは3年ほどまえのことです。
改めて今回のブックブレイクにあたり再読したのですが、どうにもテンションが上がらない。
そのままブックブレイクに臨んだんですが、なんとみなさんの反応もだいたい同じだったのですよ!

ぼくはこの本を再読する前に、「ミシマ社発の雑誌」を手にしました。
そして、正直、がっかりしました。
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「なんだ、これ」とぼくは紀伊國屋さんで手にした瞬間に呟いていました。
タイトルの「ちゃぶ台」の通り、ぼくにとっては、どこもとんがっているところが見つけられない一冊でした。

『計画と無計画のあいだ』は青春記です。だから無謀だし、ツッコミどころ満載だし、大丈夫かそれ? と心配させるところも随所にあります。
でも、志と熱量と行動は半端ないのです。
それが青春の青春たる証でしょう。だからぼくはこの『計画と無計画のあいだ』を面白く読ませてもらったし、三島さんを支持した。

それから約5年後・・・手にした「ちゃぶ台」。

ぼくは、ミシマ社の青春の終わりを感じたのかもしれません。
いや、正確には、「青春が終わっているのに、それを知ってか知らずか、まだ青春をしつづけている」ことへの幻滅を感じたんだと思います。

という話がぼくの基調。
そして、その延長上でみなさんと議論してみました。
そこででてきたキーワードは「100年続ける出版社」です。

はたして、その志は有りや無しや、というのが、「ちゃぶ台」を目の前に置いたときの、ぼくはじめその場にいたみなさんの感想です。

第3部 15:00~16:30 鈴木敏夫『仕事道楽 新版――スタジオジブリの現場』(岩波新書)

場所を変えて、いよいよ最後の本。
こちらはいわずと知れたスタジオジブリの名プロデューサーの人物論・仕事論。

当初この本の評価はそんなに高くありませんでした(ぼくは違いますよ)。
しかし、第2部の議論のあと、「宮崎駿高畑勲の映画をつくる」ためという、シンプルなスタジオジブリのプリンシプルを貫き、その目標を見事に達成することを導いた鈴木さんの仕事ぶりは称えられるべき、という感想に図らずもなっていましたね。

鈴木さんは終始一貫してクールであり、自分という人間の「分際」を理解していたんだと思います。
彼にはいわゆる「ビジョン」というものはありません。「宮崎駿高畑勲の映画をつくる」という目の前の仕事に専心した、その結果が現在のジブリの実績と評価につながっている。ぼくはこの本からそう理解しました。
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最後に

本について語り合うこと。
それはさまざまな価値観とものの見方に触れることができます。

じつは「いい内容だ」だと世間一般が評価する本というのは、案外読書会向きではなかったりします。
だって、「いい本だよね」で、話は終わってしまう。
侃侃諤諤、甲論乙駁、という風が起こりにくい。
だから、毀誉褒貶がある、あるいは評価が定まっていない本のほうが、じつは語り合って楽しかったり、へえという気づきが得られたりします。

ブックブレイクは、そんな場でありたいと、ぼくは思っています。

Inaさん、参加者のみなさん、改めて有り難うございました!

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