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積ん読王の 自由画帖

〈読み、考え、旅をし、見て、話して、書く〉同時代ノート。

【せんにゅう記】小島信夫を「読みあぐねている人」のための講座

20 同時代ノート 30 自在眼鏡の本棚

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今夜は、渋谷でしっとりと小島信夫の世界に浸ろうか・・・・と、丸善ジュンク堂渋谷書店で開催された、このイベントにでかけてきました。久しぶりの夜の渋谷です。例によって、また道を間違えて円山町のほうに行きそうになりました。
あれ、いまリンクを張って気がついたけど、タイトルは「書きあぐねている」になってるけど、ほんとは「読みあぐねている」ではなかったかしら。スピーカーの佐々木敦もそうおっしゃっていたし。

honto店舗情報 - 【店舗情報】≪小島信夫短篇集成≫完結+≪小島信夫長篇集成≫刊行開始記念書きあぐねている人のための小島信夫入門(MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店)

ということで、小島信夫であります。
水声社という出版社から一昨年あたりからだったら、小島信夫の評論や短編の集成がシリーズとして刊行されはじめました。
ぼくは評論は持っているのですが短編集成は持っていませんし、出はじめたばかりのこの長編集成は、最初から『別れる理由』というとんでもない長編から刊行し始めたので、購入をだいぶ躊躇っています。
これ作戦が良くなかった気がしますけどね。でも、全巻予約された方が22人になったと出版社のかたは喜んでらっしゃいました。

ちなみにぼくは以前、こんな記事を書いていました。thx.hateblo.jp

ええ『別れる理由』3巻持ってます、しっかりと。とくに最終巻は、早稲田の古本屋さんが探してくれたもので、とても感謝しています。あ、『木佐木日記』もどうぞよろしくお願いいたします。

とまれ、「小島信夫短篇集成》完結+《小島信夫長篇集成》刊行開始記念書きあぐねている人のための小島信夫入門」を聴いてきました。スピーカーは、小説家の保坂和志さん、評論家の佐々木敦さん。
結果的に、しっとりと、ではなく、けっこう笑っていた90分でした。

保坂和志さんについては、こちら。
保坂和志公式ホームページ「パンドラの香箱」

佐々木敦さんについては、こちらをどうぞ。
佐々木敦 - Wikipedia

最初は、保坂さんがどのように小島さんと知り合われたのか、1990年代あたりの文学シーンとご自身の当時(当時はセゾン系のカルチャースクールの事務方)とを交錯させつつ、語られていきました。
小島信夫は、当時『別れる理由』と『私の作家遍歴』で有名だったらしいですが、保坂さんが手にして読んだのは長編『美濃』だったそうです。

なんでも、保坂さんは自分のカルチャースクールで「創作コース」をやりたくて、その校長を小島信夫さんにお願いしたのだとか。
カリキュラムを必死になってつくり、保坂さんは小島さんにその案を送るのですが、電話越しに「こんなんじゃ、作家は育たないよ。作家というのは、なにかひとつ持っていればいいんだ。そのひとつがない人がほとんどなんだ」というような話をされたとか(ちなみに小島さん本人は電話で話すのが大好きだったんですって)。

さて、そこから保坂さんが『別れる理由』が苦手な理由とか、小島さんの方法論は「天然なのかわざとなのか」とか、要するに「最初からチューニングできていないギターで即興演奏する人」なのだとさらりと言った保坂さんに、佐々木さんが「でも、チューニングできていなかったら気がつきませんか」と切り返して「天然」論争が深まっていったりとかして、そうやって小島信夫の世界にぼくは足を浸していったのでした。

最後に保坂さんが言った、「小説とは書かれるたびの小説」という言葉が印象的。
つまり、小説は最初から完成されたものでも固定されたものでもなく、要するに完パケではなくて、書かれるたびに変化していくのだ、それを堂々とやってのけたのが小島信夫という人なのだ、という話に、さて何から読もうかと腰を上げた、渋谷の夜でした。