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積ん読王の 自由画帖

〈読み、考え、旅をし、見て、話して、書く〉同時代ノート。

【読む #179】大河原邦男『メカニックデザイナーの仕事論』で知る、仕事は「つくる」もの

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大河原邦男メカニックデザイナーの仕事論』(光文社新書)。

おそらく、日本で「メカニックデザイナー」という職業についたのは、大河原さんがはじめてじゃないだろうか(あ、オビにはそう書いてある)。
職業になった、というより、そういう仕事をつくったといっていい。いわばファウンダー。

もともとは「オンワード樫山」の服飾デザイナーとして出発した大河原さんが、どういう経緯でメカニックデザイナーになったのかというくだりを読んでいくと、「ああ仕事は縁だな」とつくづく感じます。

彼はメカニックデザイナーになりたくてなったわけではないという。もちろん、少年時代は機械いじりが大好きで、初中終家のなかのものを分解してはまた組み立ててを繰り返していた。
そういう下地があったからこそ、というのは後付けの理窟みたいなところで、彼は仕事を選ぶ時に自分にとって「楽しそう」「面白そう」を大きな基準として判断していった。
だから大手アパレルに就職できても、自分にとって詰まらなそうに思えたらさっさと身をひく。

そのかわり、楽しそう、面白そうと思ったら、はじめての分野の依頼でも引き受ける。
楽観主義者で、引き受ける時にもあまり真剣に考えないみたいです(笑)。

その結果、彼はアニメ制作会社のタツノコプロで、「メカ設定」という仕事につくことになって(とにかくアニメの黎明期は人がいないのでなんてもやらされたし、それを拒んでいられなかった)、デビュー作『ガッチャマン』を手がけるのです。
その初号試写のとき、自分が設定したメカたちが動いたのを観て、彼は素直に感動したといいます。
そして、そのまま「メカ設定」という仕事をつづけ、それがやがて「メカニックデザイナー」という職業へとつながっていく。

彼の仕事の流儀は、「職人でありたい」という言葉に集約されています。
大河原邦男という個人を出すのではなく、監督の世界観に最大限に寄り添い、アニメーターたちの作業負担を減らそうと努力しつつも、スポンサーの意向にはとうぜんながら応えなければならない。
与えられた制約の中で(彼はむしろ、制約があったほうがやりやすいという)、いかに最大の成果を生みだすかというのが、彼の第一義なんですね。よく揶揄される玩具メーカー(スポンサー)とアニメ制作会社との関係について、二者は「共同事業者」であり、一緒に作品をつくっていくパートナーと言っています。そして、それを理解しているデザイナーは少ないとも。

大河原さんの仕事のプリンシプル(流儀)はいたってシンプルです。原則仕事は断らない、休みはなし、依頼は〆切り前にには終わらせている、酒がはいったら仕事はしない・・・。職人ですね。

ファウンダーとして、しかしながら後進のセンスに焦りを感じることもあると吐露していますが、この本を読んでいるとそんなに焦りは感じていないようですけれど(笑)。

最後に、大河原さんから若手への3つのアドバイスが載っています。

  1. 「物体を正しく捉えること」
  2. 「頭の中で立体を描く力」
  3. 「なんでも興味を持つこと」

本書に挙げられた、メカニックデザイナーとして関わられた数々の作品を眺めていると、一視聴者としてほんと御世話になりました、って感じです。
いまやっている「大河原邦男展」、見に行かなきゃ。www.okawara-ten.com

映画美術監督種田陽平さんの仕事論も楽しかったです。thx.hateblo.jp

大河原邦男Walker

大河原邦男Walker