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積ん読王の 自由画帖

〈読み、考え、旅をし、見て、話して、書く〉同時代ノート。

【書架ノート #170】胃痛がして、関川夏央『豪雨の前兆』を引っ張りだしてきた

30 自在眼鏡の本棚 33 小説・創作

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関川夏央『豪雨の前兆』(文春文庫)。

夏バテか夏風邪か、一昨日からどうも胃のあたりがヘンだなと思っていたら、通勤途中で吐いてしまい、急性胃腸炎と診断された。
とにかく胃がむかむかして気分が良くなく、ここ両日はぐったりしている。

ちょうどお盆明けくらいのときだったかに買ってきた別の本*1のタイトル元がこの本だと知って、本棚から引っ張りだしてきてあった。
『豪雨の前兆』。
不吉で不穏なタイトルだ。
でも著者はこの不穏さが好きなのだという。
この本はいったいなんのことを書いているのかというと、漱石の伊豆の大患前後についてのエッセイだ。

明治四十三年はすでに百年近い昔である。八月六日、漱石が転地で修善寺に向かった日から小雨がぱらつきだした。集中豪雨の前兆であった。八月八日から本降りとなり、八月十六日まで雨は間断なく降った。自分が水の底にあるかと思われるほどの豪雨とともに漱石は病んだ。
雨が先立って風が吹く。草原が揺れる。遠い雷鳴が聞こえる。天から地へと稲妻が走る。ティンパニーが響きわたる。
不穏である。心が波立つ。
私は、この不穏さ、心の波立ちが大好きなのである。

ぼくの胃の具合の悪さを「予兆」したかのように、この『豪雨の前兆』が手元にあって、そこには漱石の大患の話が書いてある。
やっぱり不吉で不穏。さっさと寝てしまおう。

豪雨の前兆 (文春文庫)

豪雨の前兆 (文春文庫)

*1:原武史『潮目の予兆』。