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積ん読王の 自由画帖

〈読み、考え、旅をし、見て、話して、書く〉同時代ノート。

【折々の本棚 #119】近藤史恵『タルト・タタンの夢』にでてきた、ヴァン・ショーが飲みたくなりました

30 自在眼鏡の本棚 32 たまミス(「たまにはミステリくらい読むわよ」)

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近藤史恵『タルト・タタンの夢』(創元推理文庫)。

カウンター7席、テーブル5卓。下町の小さなフレンチ・レストラン、〈ビストロ・パ・マル〉(悪くはない、の意味)は小ぶりな店だ。
そこのシェフである三舟は、10年以上フランスの田舎のオーベルジュやレストランを転々として修行してきたという変わり者である。
無精髭を生やして、長い髪を後ろで束ね、一見するとサムライ風の寡黙なシェフの料理は、気取らないでリーズナブル、そして本当にフランス料理が好きなお客さんのハートを掴んで離さないものばかりだ。

そんな店に通う人たちの、まあ事件ともミステリともいえないような出来事(そう、そう呼ぶのがいいかもしれない)を、シェフ三舟が鮮やかに解決していく。
シェフは名探偵なのだ。
婚約したばかりの常連客が体調を崩した話、極度に偏食なお客の不倫の行方とか、奥さんが何も言わずに家出した理由。

軽めの連作短編は、それこそこの店の料理をあらわしているようだ。気取らなくてリーズナブルで、でも味を知っている者にもしっかりとした手応えがある。なにより、心温まる話がつづく。

ぼくの近藤史恵のイメージは、『サクリファイス』からはじまるサイクルスポーツミステリだったのですが。つまりは、硬派ってことですね。

表題作にもでてくる、ヴァン・ショー(スパイス入りホットワイン)が飲みたくなってくる。
あ、二作目はそのタイトルでしたか!