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積ん読王の 自由画帖

〈読み、考え、旅をし、見て、話して、書く〉同時代ノート。

【折々の本棚 #117】 積ん読王初のリテラチャーサークル・イベント「ブック・ブレイク」を開催しました

※ネタバレあります。そして長文です。

今日、積ん読王としてはじめてリテラチャー・サークル(読書会)イベント「積ん読王のブックブレイク」の第1回目を開催してきました。fantasieimage.jp

はじめてのイベント

地元では3年ほどこつこつと読書会をつづけていますが(もう60回以上、ほぼぼくがファシリテーションしています)、今回は「積ん読王」としてはじめて行ったのです。
プロデュースは、マイ・ストレングスコンサルタントのInaさん。ameblo.jp

このブックブレイクは、今回から毎月1回ずつ、連続3回を1テーマで開きます。
初夏から盛夏へは、「夢」をテーマに設定しました。

今回は「《夢》とともに生きる」として、課題テキストは、ご存知の方も多いと思いますが、パウロ・コエーリョアルケミスト』(角川文庫版)。Inaさんの推薦です。

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

パウロ・コエーリョの紹介
パウロ・コエーリョ - Wikipedia

◆Inaさんからの推薦の言葉

推薦者から~「なぜ私はこの本をみなさんと読みたいのか」

この本は、スペイン・アンダルシアの羊飼いの少年サンチャゴが夢を信じて、旅する物語を通じて、生きるとはどういう事か、幸せとは何か、を問いかけてきます。
サンチャゴは決して特別な少年ではありません。
あまり裕福ではない家に生まれ育ち、特に頭が良いわけでもなく、可愛い少女にはいいところも見せたい、胸キュンな恋心も抱き、恐れも抱けば迷いも多いごく普通の少年です。
けれど、彼は自分の想いに正直に生きています。
何が大切なのか、いつもまっすぐにそこへ向かっています。
クライマックスで彼が語る「愛」についての言葉には胸打たれるものがあります。
先の見えない、不安定な現代社会は、まさにサンチャゴが旅した砂漠に似ています。
この小さな物語を読み返すたびに、私も大いなる夢と共に生き、真に幸せな人生を送る勇気を得ます。
この小さな本が、みなさんにも何かしらの想いを残すと信じています。 

アルケミスト』は今年で刊行25周年。文庫の帯にもそれがうたわれています。世界的ロングセラーなんですね。ぼくはタイトルは知っていましたが、手にしていませんでした。

あらすじをざっと

さて、物語はというと。
主人公のサンチャゴは羊飼いのスペイン人青年。彼は偶然に出会った王様メルキゼデックに導かれて、ピラミッドにあるという宝物を探しに行くことを決意します。

羊を売って充分な資金を懐にしたサンチャゴですが、スペインからアフリカへ渡航したところで、現地の少年にごっそりお金を騙し取られてしまいます。そこで彼は、現地のクリスタルショップで1年近く働くことします。
根気よく働いて充分な金を貯めたサンチャゴは帰郷するつもりでしたが、王様から授かったふたつの石「ウリム」と「トムミム」を手にすると考え直し、再びピラミッドに向かうことを決意します。

エジプトへのキャラバンに合流し、広い砂漠を越えようとする途中で、サンチャゴは錬金術師(アルケミスト)を目指すイギリス人の男と知り合いになります。彼は世の万巻の書物を渉猟し知識をたっぷりと蓄えていました。オアシスにいるという錬金術師に会うためにはるばるやってきたというのです。

オアシスに着いた一向は、部族間の戦争のため、オアシスで滞在させられてしまいます。そこでサンチャゴは、ある「前兆」を悟ってその意味を読み取り、オアシスの危機を救います。
そのことでオアシスにいた錬金術師から認められたサンチャゴは、錬金術師とともにピラミッドへ向かうのです。
さて、そこにあるはずの宝物とはーー。

冒険譚であり教養小説といえますが、ご存知の通りこの本は「自己啓発」的にも読まれています。
積ん読王としては、この本ははじめて読みました。

テキストの感想はというと

しかし。
正直に言わせてもらうと、参加者の方や、そしてぼくもそう感じたのですが、たしかにアフォリズムと警句がところどころに散らばっていて有益ではあるものの、どうもストーリィとしてはベーシックすぎて、さらには結末のありかたも含めて、どうも「なにが面白いのか」、ピンとこないのです。
単なるビジネス書的自己啓発本であるなら、凡庸。
エンタテイメントとするなら、なおさら凡庸。
これが、個人的には率直な第一の感想でした。

キリスト教を知らないと深くは理解できない

ですが、Inaさんは、この本はキリスト教の教えや聖書に書かれていることがフレームワークにあるのだといいます。
そして、それらを丁寧にペーパーにまとめてもらい、解説していただきました。

具体的にはというと、あまりに多くのキーワードとキリスト教の思考様式が散在しているのですが、例えば物語冒頭に「いちじくの木」がでてきます。これはなにを意味しているかというと、旧約聖書でアダムとイブが最初に見つけた地上の植物であり、福音書ではイスラエルの象徴と堕落したユダヤ教にたいする死の宣告と解釈する一説もあるとのこと。
または、「羊飼い」。主人公サンチャゴの職業です。羊飼いは旧約聖書では「良い存在」とされますが、新約聖書では蔑視の対象です。羊を飼うと「安息日」にも羊の世話をしなければならず、「安息日には休め」という教えに従えないからです。

というように、前述した「セイラムの王様メルキゼデック」、「ウリムとトムミム」、さらには「3日間」という時間さえもキリスト教には意味があるというのです! 

つまりですね、
この本はキリスト教や聖書の教養知識が理解できなければ、畢竟深く読解できないんだ、
ぼくが読んでいたのは、単なる表面的な字面だけだったんだ、
ということがよーく解りました(笑´∀`)。
Inaさんも、「だからこの本は、みなさんあまり読まれていないのかあ」と納得されていました。というより、ぼくに言わせれば、字面しか追っていないので、みんなきちんと理解できていないということだと思っています。

参加者の方が一読されて、どうも腑に落ちない、ピンとこないという箇所は、Inaさんの解説でほぼ理解できました。
はじめてこの本の奥深さに触れることができたと思います(知ったわけではありません)。
一読したあととはまったく違う風景が立ち現れてきたのです。

そして、その場にいたみなさんがよーく感じたのは、
「(少なくともここにいる)日本人は、一神教の世界とはまったく違う風土に生きているんだ」ということだったと思います。

それがオチかっ!

ここからは話を急ぎます(いささか乱暴に論を進めます)。
「まったく違う風土に生きている」というのは、たとえば、
一神教と『世間様』」、つまりはキリスト教では個人は神と契約しているが(だから非人情なんだ)、日本は世間というものが存在しているのだとか、
「神によって与えられた試練をクリアしたら、ご褒美として物理的なギフトがもらえる(日本人は精神的名誉的な承認を受ければ、金銭的な見返りがなくともそれで満足)」とか、
「日本には因果応報という発想があるが、キリスト教にはなーい」とかとか。。。
まさに「一神教vs.多神教」の議論になっていったのです。もはや自己啓発云々というよりは、宗教・風土・文化の話に展開してきました。

ネタバレ的にいいますが、物語の最後、サンチャゴは宝物のありかを知ります。
さて、その宝物とはなにか。
少年が長い旅路を経て、異国でお金を貯め、いろんな人たちに出逢い、さまざまな考えを吸収しつつ自分でも思考を重ねていった、その成長の果てにある宝物とはいったいなにか。
それは明示されていませんが、物理的な金銀財宝のようです。

えっ。。。
それがオチなの。
参加者のかたは「ふーーーん、だよね」と感じられたとか。ぼくも然りです。
そのシーンの少しまえに、主人公が大いなる覚醒に到る場面があります。そこが物語的にはクライマックスのはずであり、そこで話は終わってもいいのではと指摘に、「だって、それだけじゃ暮らしていけないじゃん」とInaさんは返してきました。

おおーっ。そういうことなんだあ。

まさに、「神によって与えられた試練をクリアしたら、ご褒美として物理的なギフトがもらえる」ことの体現です。
かように、宗教・文化というのは、深いキャズム(溝)があるのですね。
うむ、面白いです。

終わりに

少し長くなりました。
Inaさんからは、

独り本読む時間をこよなく愛する私にとって、1冊の本を人と語るという初めての体験は、とても新鮮で実り多いものでした。
また、私にとって当たり前なキリスト教や聖書は、多くの日本人にはなかなか理解されにくいという事も、よ~くわかりました。
いつも、「どうして、みんな、そんなに人の目が気になるのだろう???」と思っていましたが、なるほど~と知るところとなりました。

参加者の方からは、

アルケミスト』を通して、キリスト教についての情報を得ることができました。宗教が発生した地域や風土による影響もあるのかもと感じます。
これからも仏教徒であると思います(^^)。

とのご感想を頂戴しました。
約3時間の濃密な時間でしたが、とても貴重なものだったと感じています。

Inaさんはじめ参加された方には改めて感謝いたします。
ぼく自身、なによりも読んだ後とみなさんと議論した後では、目の前の風景が違うように感じられたのは新鮮でした。

Inaさんも、さっそくにレポートを掲載していただきました。ぼくのレポートよりも率直に書かれているような気がします。
Inaさん自身は、読書会というイベントにもはじめて参加されたので、その感想も合わせてです。ameblo.jp

次回は・・・

次回第2回「ブックブレイク」では、「《夢》をかたちにする」と題して、林宏樹近大マグロの奇跡 完全養殖成功への32年』 (新潮文庫)www.amazon.co.jp
を課題テキストにします。
お問い合わせ、申込は、こちらからお願いいたします。fantasieimage.jp

みなさまとお目にかかれることを、楽しみにしています。

アルケミスト Anniversary Edition

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