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積ん読王の 自由画帖

〈読み、考え、旅をし、見て、話して、書く〉同時代ノート。

【折々の本棚 #115】バリー『ピーター・パンとウェンディ』の最後の一章が、やっぱりせつない

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ジェームス・M・バリー『ピーター・パンとウェンディ(Peter and Wendy)』(新潮文庫)。

星降る夜にウェンディの部屋を訪れるピーター・パン。彼らは妖精ティンカー・ベルの魔法の粉を身体にふりかけると、ネバーランドへと一路空を飛んでいくーーというおなじみのストーリィ。その原作が新訳で登場しました。
新潮文庫の、この新訳シリーズ、他にも『小公女』『にんじん』など、児童文学も手がけてくれている。

ピーター・パンはディズニーの長編アニメは観たことがある向きが多いだろうが、原作をきちんと読まれた方はそんなに多くはないのではないか。
ピーター・パンとウェンディたちの、ネバーランドでの冒険譚、とひと言で終わってしまうのはちょっと惜しい。訳者あとがきにもあるが、もう少し陰影がある話なのである。

じつはこの本は、原作者がその戯曲をもとにして、舞台で1908年にたった一度しか上演されなかった場面を追加して(第17章「ウェンディが大人になった時に」)、自分で小説化し、3年後に出版したものだという。
この一章があることで、単なるおとぎ話になっていないという指摘もある。

章のタイトルから察せられるように、この17章はピーター・パンとウェンディの訣別の一章ですね。
ウェンディは寝室の電灯をつけ、ピーター・パンに自分の姿を見せて、自分がすでに大人になってしまっていること、子どももいることを示す。

「わたしはもう年をとったのよ、ピーター。とうに二十歳を過ぎているわ。ずっと前に大人になったの」
「大人になんかならないって約束したじゃないか!」

胸がちくんと痛くなる台詞ですねえ。

ピーター・パンとウェンディ (新潮文庫)

ピーター・パンとウェンディ (新潮文庫)