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積ん読王の 自由画帖

〈読み、考え、旅をし、見て、話して、書く〉同時代ノート。

【折々の本棚 #108】阿古真理『小林カツ代と栗原はるみ』は、単なる料理研究家論じゃないね

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阿古真理『小林カツ代栗原はるみ 料理研究家とその時代』(新潮新書)。

はい、タイトルで即買い。いつかでるんじゃないと思っていたテーマです。

TV放送から60年以上、クイズにアニメにプロレス、お笑い、旅、グルメとTV番組のコンテンツの移ろいは変わっていくが、料理、なかでも家庭料理番組はまさに万古不易のコンテンツとしてありつづけている。それは、出版でも同じこと。「食」が人間存在の根源に関わっている以上、ネタは尽きない。

それらのメディアで活躍する「料理研究家」がこの本のテーマだ。
一概に料理番組、料理読本といっても、それらが世相を反映している以上、その時時でブームになる研究家にはそれなりの理由がある。
日清日露戦争以降に広まった「主婦」という言葉は、女性の「近代」を色濃く反映させている。
「食事」は女性担当という社会的な役割があたりまえという共通認識の中で(それがいいわるいの議論はしていない)、自分の家庭でどのように「食」を提供するのか、その方法も意義も、女性にとってはいつもついて回る厄介なテーマだ。

冒頭には、著者から「主婦と料理」という切り口での簡単な現代史が語られる。欧米風の西洋料理にあこがれた時代から日本食への「回帰」、女性の社会進出とともに「時短」と「手抜き」が重宝がられつつも、平成も半ばをすぎれば一方で「基本をきちんと踏まえた」料理志向へとまた戻っていく。

小林カツ代が登場したのは、女性が社会進出をはじめた1980年代だった。会社の仕事と家庭をどう両立させるか。
そこで彼女が提案したのは、おいしく簡単で時短でできる家庭料理だった。

彼女がかつて人気を博した「料理の鉄人」に登場したとき、番組側は彼女を「主婦の代表」と紹介したかったが、小林カツ代はそれを断固拒否したという。
それは「主婦でない人に失礼だし、鉄人たちにも失礼だ。これはプロとプロとの戦いなんだから」といった。

彼女はいった、「フランス料理がある、和食がある、中華料理がある。そのひとつに家庭料理がある」。

そして、平成にはいると、「料理研究家」は「カリスマ主婦」となり、ライフスタイル全般を演出・提案するようになっていく。
そこに登場するのが栗原はるみでなのであります。

小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代 (新潮新書)

小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代 (新潮新書)

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