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積ん読王の 自由画帖

〈読み、考え、旅をし、見て、話して、書く〉同時代ノート。

【きま本 #95】笠原和夫『シナリオ仁義なき戦い』を読みながら、ココロに広がっていく荒涼がじつはなんとも甘美なの。

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笠原和夫『シナリオ仁義なき戦い 仁義なき戦い/広島死闘編/代理戦争/頂上作戦』(幻冬舎アウトロー文庫)。

ほんとうは、菅原文太愛川欽也の「トラック野郎」の文庫について書くつもりだったのだが、あいにく手元に見つからなかったいうのと、菅原文太つながりで「仁義なき戦い」をDVDで観たので、この文庫本を手にしてみました。

脚本家・笠原和夫については、別に『昭和の劇』という分厚い単行本もあるのだが、ひとまずおいておく(こっちは手元にちゃんとあるぜ)。
Amazon.co.jp: 昭和の劇―映画脚本家・笠原和夫: 笠原 和夫, スガ 秀実, 荒井 晴彦: 本

終戦後の昭和22(1947)年、復員後ぶらついていた広能昌三(菅原文太)は闇市で暴れる男を拳銃で射殺、刑務所送りになったことからヤクザ社会に身を置くことになった。
以来20年、血で血を洗う広島ヤクザ抗争の火蓋がきっておとされる。

この本は、笠原和夫が書いた「仁義なき戦い」4部作(じつは5部作なだが、それは解説のなかで中条省平が説明している)のシナリオ集である。

暗殺、裏切り、復讐、非業の死・・・ともに同じ盃を交わした男たちは、やがて何を信じていいのか解らなくなって血の海に消えていく。
前出の中条は、笠原の脚本作品からベストを選べといわれたら、「総長賭博」とこの「仁義なき戦い」4部作を選ぶとしている。

東映ヤクザ映画の系譜において、前者(「総長賭博」のこと)は六〇年代後半の仁俠路線のもっとも完成度の高い傑作であり、後者(「仁義なき戦い」のこと)は七〇年代前半の実録路線の決定的な達成だからである。
テーマや題材を抜きにして、純粋なドラマトゥルギーの面から見ても、「総長賭博」はいわば古典主義の頂点を記録し、「仁義なき戦い」はリアリズムの深い底を窮めて、表現主義的な誇張にまで達している。   ※()内、改行は引用者

脚本をぱらぱらと読んでいくと、底知れぬ荒涼が広がっていく。多くが死に、血が流れていき、男たちが墜ちていく。

闇市派、または焼け跡派と呼ばれる世代の人たちの中には、あの頃の空虚な混沌の中に、新しい時代の可能性とエネルギーを見た、と懐古する人も多い。
だけど私にとっては、焼跡時代は、振り返るのもおぞましい、暗黒の時代であった。自分が生きる為に奔命する、ただそれだけでさえ、周りの誰かを傷つけ、斃死させたに違いなかった。

そう、笠原は述懐する。

昭和の劇―映画脚本家・笠原和夫

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「仁義なき戦い」調査・取材録集成

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破滅の美学 (ちくま文庫)

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「妖しの民」と生まれきて (ちくま文庫)

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